2017年12月10日日曜日

何もしないをやってみる Part. 4

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ノリで書き連ねていて小説的な感じになってきているが、このシリーズは紛れもない実話、体験談である。

戻るに戻れなくなった中国道から、当初予定だった米子自動車道を雪で断念し、比較的平坦な印象の、スノータイヤ規制とは書かれていなかった鳥取道という「道に自動車と書かれていない」ことが一抹の不安を感じさせる道に進路を変えて、目に入ってくる情報には細心の注意を払いながら進んだ。

前後に車の気配がない状態がしばらく続く。かつて車で九州地方を営業して回っていた頃、宮崎から熊本に抜ける山中で道が崩落しており、文字通り山の中を切り拓いて作られていたアスファルトでもない山道で味わった不安を思い出す。

そして予感は的中するのである・・・

まず、智頭~鳥取南間は夜間交通規制という看板。民家の灯りすらない山中でやたらとはっきり自己主張する明るい看板である。う回路があるとは書かれているものの、これはひょっとして夜間は道路凍結するからではないか?という不安に襲われる。

そして進むにつれてもっと悪い情報が目に飛び込んでくる。

「スノータイヤ規制」である。
サービスエリアで米子自動車道にははっきりと表示されていたにも関わらず、鳥取道には表示してくれないものなのかっ?!

しかも進み始めて表示されていてもどうやって戻っていいかもわからないではないか。かつての宮崎~熊本間の山中移動でも直前で崩落の情報が書かれていた。一体日本の地方の道路行政はどうなっているんだ?

しかし思い悩んでみても仕方がない。多少辛い状態であっても永遠に続くことはない。雨が降ってきたが所詮雨である。スノータイヤ規制だって多分、朝方に道路が凍結するぐらいの温度になるくらいの話だろう・・・しかし道路上にところどころに置かれている温度計は一体なんのためなんだろうか・・・?

ヘルメットのシールドを叩く雨に何か「ふわり」と当たってくる物体がある。進むにつれてその柔らかく撫でてくれるかのような印象の物体が、まるで雪女さんの美しい悪魔の微笑みであるかのような雪であることに気づかされるまでそう長くはかからなかった。

何故か? だって積もってるんだもん。。。

どおりでところどころに温度計が置いてあるわけである。そしてバイクを進めていくごとに気温は2度からマイナスへと変わっていく。もう先行きに不安しか感じなくなってくる。いや、超えれば終わるはずだ。終わってくれなきゃ やだっ (ノД`)・゜・。

なんとか器用にトラックが作ったであろう雪のわだちの上を走り、これすらなくなったら手詰まりだと考えていた。暗闇の中、温度計が指す温度が少しでも上がってくれないかと思いながら前後に車すらいない道を走る。

こういう時、前後に車がいないことは自分が人間社会で守られている領域を少し外れて大自然と対峙しているというとてつもない恐怖を感じさせる。

いや、今俺が着ている漁師仕様のカッパは親父の形見である。きっと親父がついていてくれる。。。

と、ワインディングしている道路でミラーに時折光が見えるような気がした。とうとう幻視まで見えるようになったかと速度を落とすとそこには3台のトラックがスピードを上げて追い上げてきた。

親父・・・ (ノД`)・゜・。

とりあえず徐行してトラックに先行してもらいスピードが速いため追いつけないものの新たに作られた雪上のわだちをひた走る。親父のことを考えた刹那、トラックが追い上げてきた瞬間には不覚にも涙ぐんでしまった。

と思っていたら次から次へと後続車が走ってきた。なんだ、意外と使われているのね鳥取道 (*´▽`*)

しかし前後に人がいるというのは山中の行軍で非常に心強いものがある。というか逆に、雪の上を走っている時に後ろから煽られるのはとんでもない恐怖心をも同時に煽ってくる。

これ以上雪の上を走るのは無理かもしれない・・・と、そう思いながら時折現れるトンネルで恐怖心に負け、生まれて初めてトンネル内にある非常駐車帯で停車した。途端に車の気配がなくなり、トンネルの薄明りの中一人になる。

トンネルというのは中に止まると異様な雰囲気の場所である。よく心霊番組などでも取り上げられているにも理由があるのを初めて体感させられた。しかしここで心霊が出てきたところで生命の危機にさらされている俺にとって雪上でトラックに煽られる恐怖に比べればどうということはない、なんならブログのネタにしてやる かかってこいっ( ゚Д゚) などと考えながら煙草を吸った。

煙草を吸いながら周りを改めて見まわしてみる。肩の位置に人が歩くことを想定しているのか歩道のようなコンクリートがある。すぐ近くには非常口と書かれたおなじみのドアを抜けていこうとするピクトさんがいる。

寒いのは寒いが風もなく、前後の雪道から考えると天国のような温かさである。丁度バックパックの中にはホワイトガソリンで動くコンロもある。一晩をここで明かそうかとも考えたが致命的な物品の欠落に気がついた。水を持っていないのである。

高速道路はところどころパーキングエリアなどがあるので水分補給には事欠かないと考えていた俺が甘かった。サバイバルの基本である水がなければ長時間を過ごすことは難しい。しかも少し煙草を吸って落ち着くとやはり心霊現象などを想像する恐怖に耐えながら一夜を明かすのは嫌だ。携帯電話はただの冷たいガラス板と化していて助けを呼ぶこともできない。仮に電話できたとして、バイクは故障はしていないので保険会社を呼ぶわけにもいかないのだ。保険会社に電話したらそれは単なる無謀なバイク旅の馬鹿なおっさんである。状況がこれ以上悪化したら絶望するしかないが、ここまで長く連れ添ってきた相棒のバイクが生きている以上、バッテリーはビンビンダゼっ♪と涙目で強がる他ない。

大丈夫、俺には親父がついている。先に進もう。。。

つづく。

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