今回はアメリカ留学中にあった出来事を書いていこうと思います。
MBAのプログラムを受講できるようになった時に、かねてから友人に聞いていたGraduate Assistantship(以下GA:教授の手伝いをして時給20ドルがもらえるバイトみたいなもので、時間制限が一枠週10時間であるものの、時給がとても良いので人気があった)という制度に参加させてもらるよう、MBAの学長みたいな人にお願いしていました。
ある程度成績も安定していたため、色々学長に文句を言われながらも(申請がとても多くて、且つ個別にお願いに来る生徒も多かったみたいです)なんとかGAをさせていただけることが決まり、初日に担当になる先生のところに行った日のことでした。
学長とあいさつに行った時に確か僕は目の前にはいなかったですが、声が聞こえる範囲で学長と担当の先生が言い合っているのが聞こえました。
ざっくりと
「使える奴をよこせって言ったのになんで、留学生を連れてきたんですか、学長?アメリカ人でも難しいポジションなのに留学生ができると思えないのですが?」
こんな感じでした。
いや、もう入る前からこれですか?
なんとか話している内容が聞こえるぐらいでしたし、話し方が速すぎてわからなかったのですがなんとか学長の説得が終わって、学長は「頑張れよ」みたいなことを言って去ってしまい、担当の先生と二人になった時に明らかに不機嫌な感じで先生はこう言い放ちました。
「時間がかかっても構わないけど、このマニュアルを理解してシステムを使いこなせなかったら君は首だ。GA自体はやめなくてもすむかもしれないが、私の下では働いてもらえない。」
いやいや、そこまで言われますか?
渡されたのは「User's Manual」と「Operator's Manual」で、「Operator's Manual」はA4サイズで漫画の単行本ぐらいの厚さ、ぱらっと見た感じでは特殊な用語が5割ぐらいで全く意味がわかりませんでした。
それと、私が自分のPCを買ったのはこの時に先立つ3か月前ぐらいで、ブライドタッチは習得していたもののPC自体は全くと言っていいほど素人でした。
しかし、事前に学長からもGAは他の学生の申請も多くて狭き門だと言われていましたし、ここでやめるわけにはいかない、こっちも生活が懸かってる( ゚Д゚) と「全力を尽くします」と答えました。
今から考えると、他のGAの仕事は仕事時間中に自分の勉強しても良かったり、どちらかと言うと私の先生が特殊だったみたいなんですが、私にとっては本当に幸運な出会いだったと今では思えます。
ただし、この時は完全にビビってしまっていましたがw
実際に仕事を始めてわかったのは、意外とこの先生がかなり詳細に手順を教えてくれて、且つ対応するマニュアルの箇所も同時に示してくれながら後でもわかるようにしてくれたのと、アメリカのマニュアルは最初から順を追って読んでいけば「誰が読んでもわかるように」書かれているので、実際にやってみるとそれほど難しい内容ではありませんでした。
オペレーションは基本的に、学生が提出してきた戦略の入ったフロッピーディスクを一枚一枚データ取り込みし、全部取りこめた段階でゲームの世界を一年進行させて結果をそれぞれのフロッピーディスクに更新して生徒に返す、というものでした。
このゲームは僕にとって今ではなじみの深いエクセルのマクロで作成されていて、本当に大変なのはエラーが起きた時の対応だったのは、開始後しばらくしていくつかの学生のチームが「倒産」してしまってからわかったのですが・・・・
学生の戦略は、基本的には資金をどのような形で利用するか、例えばコスト圧縮にコストをかけるのか、ブランドイメージ向上のためにこれこれの金額で芸能人を雇うとか、品質を高めるためにコストをかけるとかで、さらにそのための資金をどのように都合するか、例えば売り上げで見込むのかとか、借り入れするかとか株式発行するかとか結構細かなことができたのを記憶しています。
それに世界市場動向で世界市場全体の売り上げを操作できて、新聞の株式指標のS&Pとかの切り抜き記事から株価上昇指数とか、先生がこのタイミングで世界恐慌を起こしてターンアラウンド戦略を学ばせたいとかができました。
で、、、エクセルのマクロで結構複雑な仕組みを作ったことがある人ならある程度理解いただけると思いますが、不正な値が入ってしまうと予期せぬ動きをするもので、あるチームが倒産するとそのチームをなんとかして倒産寸前の状態に回復させて存続させるか、倒産させてチームを解散(この場合試験や論文の内容を加味してセメスター途中でF(FailureのFだと教わりました)をつけて以降受講させないかの決断をしないとゲーム自体が続けられなくなっているものでした。
今となってはゲームの選択に無理があったのではないかとも思うのですがwww
当然チームメンバー全員にFをつけるわけにもいかず、教授の立場としてはできるかぎり出席率があからさまに悪いなどの生徒だけ落第させて、チーム自体は存続させ、個々人の努力と成績に応じたグレード(成績)をつけてその授業を終わらせたいわけです。
つまり、倒産するような戦略を選択をしたチームの戦略自体を分析し、そのチームの戦略を倒産寸前の状態まで回復させると同時に、他の頑張っているチーム以上に「勝たせない」ことが必要になってくるということです。
これをするためには、月次で負債の利子支払いを持っていたこのゲームではどのタイミングで不渡りが起こるかを逆算し、不渡りを出さないところまで資金調達を見直し、資金調達を行った理由である投資を縮小させ・・・という高度な会計知識を要求されるわけで、毎週「戦略フロッピー」を提出させていた私の担当教授は私が入るまで、生徒が週末に戦略を立てられるように翌日の金曜日までに一人ですべてをこなしていたということだったのです。
人に教えるためには時に倍以上の努力と教える人数分の時間を必要とするものなのだなぁ・・・と感心しながら、毎週フロッピーが提出される木曜日はこの担当教授と共に阿鼻叫喚地獄をしばらく続けることになりました。
私の運が良かったのは、GAとして仕事を始める直前に、しかもアメリカでの初めての授業で会計学を勉強していたことだったと思います。そのため、かなり新鮮な知識で会計用語を理解して、その知識をフル活用して倒産を回避させるための手法を教授から直接学べたわけです。
ある意味これほどの授業は私が受けたMBAプログラムの中ではなかったと思えるほどでした。
1回目のセメスターが終わるまでにはどのようにすれば倒産しないように調整し、そのチームが失敗から学ぶためにどのように修正を加えるべきかについて教授とディスカッションができるまでになれました。
私はMBAプログラムの終了までの間の2年間このゲームと付き合うことになったのですが、残りの1年半は教授に召喚されて、倒産寸前のチームにコンサルティングに出かけることになりました。とは言ってもめったにないことではありましたが・・・
ある時は通常4~6人のチーム構成のチームが脱落者続出してかわいそうな女の子一人でどうしてよいかわからないという状態に派遣されたこともありました。たかがゲームとは言え、二人っきりで倒産を回避したら付き合う付き合わないは別にして一生の付き合いをする友達にもなれたんじゃないかと思いますが。。。
派遣された女の子も得体のしれない日本人が派遣されたときは面食らったようだったですが、狼の徘徊している森に一人取り残されたリスぐらい震えながらわかりにくい日本語アクセントに文句も言わずに聞き入っていたことを昨日のことのように思い出せます。
ちなみに結構可愛い女の子でした。が、私も自分の授業で忙しかったのでゆっくり話すこともできず・・・(という言い訳をしてみる)
今回はここまでにして、次の記事で続きを書かせていただきます。
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