はじめに
前回の記事では、YouTube動画を見過ぎて行動できなくなった経験について書きました。
そこで触れた「時間を消費する」から「時間を作り出す」行動への転換のきっかけになったのが、このアルコールストーブの自作です。
実を言えば、アルコールストーブを作ろうと思ったのもYouTubeで動画を見たのがきっかけでした。
(参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=6xE6Q0P-5Mo)
ちょうどその頃、湯沸かし器が故障していたという偶然も重なり、「自分で作ってみよう」と思い立ちました。
そこから今回の動画(https://youtu.be/cpYc1Bq18Yc)の制作に至ったわけですが、
これは1回目に作った試作機の経験を踏まえ、改良を加えた第2世代のストーブになります。
日本語のYouTubeでは「自作」よりも「購入レビュー」が圧倒的に多く、
実際に自作した上で構造を理解しようとする動画はほとんど見かけません。
そこでこの記事では、実際に作って使ってみた中で得られた構造理解と注意点をまとめていきます。
1. 構造と燃焼の段階
アルコールストーブの燃焼は大きく分けて二段階に分類できます。
① 一次燃焼
アルコールを入れて火をつけると、まず開口部で揮発したアルコールが燃えます。
この段階を「一次燃焼」と呼びます。
② 二次燃焼
一次燃焼の熱でストーブ本体が温まり、内部のアルコールが蒸発します。
蒸気が噴出口から噴出し、それに火がつくことで「二次燃焼」に移行します。
販売されているアルコールストーブの多くはこの仕組みを応用しており、
特に二次燃焼では火力が強く、お湯を効率的に沸かすことができます。
試作機を観察すると、この燃焼過程の変化がより明確に見えてきます。
2. 燃焼段階と液面の関係
① 一次燃焼
アルコールの液面が上部パーツの下端よりも上になるように注ぎます。
点火すると揮発したアルコールが燃焼し、ストーブ全体が温められます。
この加熱により内部のアルコールが気化し、噴出口から蒸気が噴出し始めます。
② 二次燃焼(加圧段階)
噴出したアルコール蒸気に火がつくことで二次燃焼が始まります。
液面が上部パーツの下端を覆うことで密閉状態が強まり、内部圧力が上昇します。
これにより火力が高まり、湯沸かしなどに適した状態になります。
③ 二次燃焼(減圧段階)
燃焼が進むにつれて液面が下がると、密閉状態が弱まり火力が落ち着きます。
この段階は穏やかで、長時間の加熱に適しています。
3. 試作機から得た改善点
第1号機の観察から得た知見をもとに、2代目では以下の改良を行いました。
① 上部パーツと下部パーツの隙間を最小化
試作機では2〜3mmの隙間があり、減圧燃焼が長く続く傾向がありました。
新型ではこの隙間を限界まで縮め、燃焼時間の多くを加圧状態に保つよう設計しました。
② 噴出口の位置を上げる
噴出口をできるだけ上部に配置することで、
・火の立ち上がりを早める
・燃焼効率を高める
・保持できるアルコール量を増やす
という効果が得られました。
③ 噴出口の向きを上向きに変更
試作機では横向きに開けていたため、熱が拡散していました。
新型では角度をつけ、炎が上に向かうように設計しました。
わずかな角度の違いでも、熱伝導効率が大きく変化します。
4. 実際の制作と燃焼比較
制作工程や燃焼の様子は動画(https://youtu.be/cpYc1Bq18Yc)で確認できます。
ここでは、実験を通じて明らかになったポイントを整理します。
新型は試作機に比べて噴出口からの炎が長時間持続
火が消える直前まで燃焼が続く
圧力の維持により火力が安定
二次燃焼の開始が早く、最大火力までの時間が半減
また、保持できるアルコール量の増加により、燃焼時間は最長17分に達しました。
予想以上に安定した燃焼を実現できたことは大きな成果でした。
5. 使用と注意点
燃料は燃料用アルコール(メチルアルコール主体)を20〜25ml程度に抑える。
燃焼中の補充は厳禁(引火・溶損の危険あり)。
風防を使用する際は通気を確保し、酸欠を防ぐ。
鍋底との距離は5cm以上が理想(ChatGPTによる助言)。
6. 終わりに:効率だけが正解ではない
比較実験の結果、改良型は明らかに火力・効率ともに優れていました。
しかし実際の使用では、試作機にも独自の利点があります。
筆者は週末に事務所で一人焼き肉をするのですが、肉を焼くときは強火が良くても、野菜を温める時は弱火の方が扱いやすい。
そうした使い分けをする中で、「火力至上主義」は必ずしも最適ではないと感じました。
新型は強火を長時間維持するのに向いていますが、試作機は減圧燃焼時に上に置いた鍋を外すと炎が消えるため、火力をコントロールしたい場面ではむしろ便利です。
キャンプのように携帯性を重視するなら一台で万能なものが理想でしょう。
しかし、用途や環境に応じて使い分けるという考え方も現実的です。
結果として、効率の追求よりも「使い心地と選択肢の幅」に価値を感じるようになりました。
特に、先に触れた ChatGPT による「鍋底との距離は5cm以上が理想」という助言が事実であれば、現行のデザインは熱効率の面でまだ改善の余地があることになります。
この点が、新しい設計に取り組む大きな動機となっています。
🔗 関連動画
▶️ 【自作】アルコールストーブ:改良版の作成と燃焼実験
※Youtube 動画については2025/10/22の20時に公開予定です。
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